とうとう三菱からランエボの最終のご案内が行われました。ランエボが現在のステータスを勝ち取った舞台となったWRCも、今ではヴィッツ・クラスのフィールドになってしまいました。かつての絶対王者とはいえ、その存在も年を追うごとに風化してしまうことが、このクルマにとってはとても辛かったようです。現在では完全に支持基盤を失ってしまい「宙ぶらりん」な状態でして、それでも日本国内でも細々と販売が続けられましたが、先細る販売台数とともに当然に車両価格も上昇しますし、現行の価格ではなかなか新車で「ランエボでも買ってみるか?」という気分にはなりにくくなってしまいました。乗り出しで300万円くらいに抑えてあればまだまだ期待出来そうなんですけど。
それに加えてランエボの息の根を完全に止めたのが、2007年にランエボXと同じタイミングで登場した日産GT-Rだったと思います。ランエボのものと比べても全く引けをとらない最速の駆動システムを持ち、パワートレーンも日本車の常識を超えたスーパーカー仕様になっていて、これまで「スーパーカー」にも勝てると吹聴されていたランエボを突き放すほどの、「280ps」を大きく振り切ったAWDのスーパースポーツが「777万円」で登場してしまったのは本当に痛かったですね・・・。日産と三菱の駆動システムはそれぞれに一長一短あって甲乙付け難いですが、ベース車(スカイラインとギャランフォルティス)の設計の本気度と搭載されているパワートレーンが全然違うことが、致命的な差を生んでしまいました。
もうGT-Rが出ちゃったのだから、「最速」へのこだわりなどは捨てて「お手軽&ハイパフォーマンス」といった日本車らしい方向性を模索すれば良かったのですけど、これもなかなか難しい部分があったようです。現在では急速にターボ技術を持つようになった欧州メーカー車が、今ではスポーツモデルと称して、次々と日本に上陸を果たしています。しかも三菱にとってはメルセデス以外の全ての欧州メーカーが大切なターボチャージャーの「納品先」ですから、安易にビジネスパートナーの商売の邪魔をするわけにもいかないわけです。そもそもゴルフGTIとどっこいどっこいの性能しかないランエボなんて・・・まったく魅力ないですよね(あんなオモチャと一緒にすんな!とお怒りのエボファンも多いでしょうけど)。
ということで「前」も「後ろ」も塞がれて行き場を失ったランエボですから、残念ながらモデル廃止も止むなしという判断みたいです。エボと入れ替わる形で日本のスポーツカーファンを上手く捕まえているのが「トヨタ86」でしょうか。本体価格を250万円〜という設定は絶妙で、プリウスという選択もなんだか安易だから「ひとつ86でも買ってみようかな?」と一般のサラリーマンの気持ちを上手く揺さぶっています。乗り出しで300万円という設定はなかなか「マジカルなナンバー」のようで、富裕層の検討する2台目(趣味のクルマ)としても最も捗る価格帯のようです。どこぞのブログ主さんはF10の5シリーズの二台目にマツダCX3を購入したようで、その性能と価格になかなかご満悦なようでした。しかしランエボXの今回のファイナルモデルは乗り出しでおよそ500万円!う〜ん手が出しにくい(と想像されます)。
けれどもこのエボは「ファイナル」ですから!もちろんあれこれと想像を膨らませることができます!初年度で3万台近く売ったという「86」に比べて、1000台限定の「ファイナル」の中古車価格はおそらく、新車購入時の初期費用こそ86よりも200万円ほど高かったものの、3年3万キロ乗って手放す時にはそれ以上のプレミアが付いている可能性が高いです。86だと恐らく乗り出し300万円だとして3年3万キロで120万円付くかどうかくらいだと思います。しかしエボ「ファイナル」は乗り出し500万円で3年3万キロでも320万円以上は余裕で付くんじゃないでしょうか?いや400万円に迫る勢いかもしれません?(もちろん金額を保証するわけではありません!悪しからず)
もちろん86に乗りたい人は86で、エボに乗りたい人はエボで!という選択が一番なのは言うまでもないですが、果たしてどっちがより楽しめるのでしょうか? デザインは86の方が素直にかっこいいかもしれません。デートをするなら?乗り込み易さが結構大事で、これに関しては圧倒的にエボがいいです!実は86はデート車としていろいろ欠陥があります(助手席の女性には不満みたいです)。実際に聞いたところでは、なんかゲームセンターの乗り物に乗っているような乗車ポジションは不自由だとか・・・。一方で動力性能に関しては特にエボより非力な86で不満を感じるような道はないですけど、ちょっとパワー出るBMWに煽られたりしたときに、エボの方が余裕で引導を渡せるかもしれません。まあエボに絡んでくるBMWなんてまずいないでしょうけど。逆に86は結構絡まれますね・・・というか絡まれている86をしばしば見かけます。独特のおケツがやたらとブレるセッティングなので、首都高や中央道などのタイトな高速道路で余裕が無くなるのはちょっと困るかもしれません。
逆にいろいろなクルマに絡まれたい!という淋しがり屋には「86」という選択がいいかもしれませんし、そういう人にはエボのように周囲から徹底的にスルーされる存在はツマラナイでしょう。実際、高速でも峠道でもエボが後ろから来たらとりあえず避けますよね・・・。あとはスポーツカーとして重要な要素が「ハンドリング」だと思いますが、これに関してはどちらも「?」なところがあります。一般論としてはFRの86の方が有利と考えられていますが、あの切れ始めの鈍さから一気に鋭くなって「クルン」と回る86のハンドリングには賛否両論があります。FRってもっと素直でニュートラルなモノでは? 誰かがスポーツカーはバットやラケットといった「専門的な道具」と言ってましたが、たしかに「86」のハンドリングはスポーツ走行するためのプロ仕様ではありますけど・・・。
ランエボに関してはハンドリングの切れ味よりも、コーナーからの強烈な脱出速度が何よりも特徴です。トラクションはもちろんですが、旋回時に感じるフラットなフィールが重要で、「ロール」と「ピッチ」を抑え込む足回りとボディの剛性・・・ここまでは「86」も同じような美点を持っていますが、さらに「ヨー」方向の抑え込み能力の高さこそがエボの最大の特徴かもしれません。もちろんタイヤのグリップ力に大きく助けられている部分でもありますけど。ルノー・メガーヌやゴルフGTIといったFFのスポーツモデルでは、コーナーでちょっとハードにブレーキングしただけで、「おつり」を貰ってヒヤっとしてしまうので、ややナイーブになりがちなんですよね。おそらくこれらのクルマをどのように処理しようともランエボのレベルのコントロール性に到達するのは無理なのではないかという気がします。ゆえにエボが廃止されるのは勿体ないと思ってしまします。
あれこれ書いていたら・・・思わずエボが欲しくなっちゃいました。
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