競馬の日本ダービーの中継を見ていて、レース前に出走馬を見せるパドックで馬主などの関係者が周回路の内側で談笑しているシーンがなかなか華やかでした。私が子どもの頃(ダイナガリバーくらい)に良く父親に連れて行かれた府中競馬場とは全く違う世界で、着飾ったドレスの女性などもいて、クルマではなくてサラブレッドを所有する趣味というのが、日本にも根付いてきているようです。ただ一般馬主の所有馬でダービー出走の晴れ舞台まで辿りつくのは、ほぼ至難の技ですし、まるで趣味のように毎週オシャレして競馬場に出掛けてパドックへと舞い降りるなんてことはできないでしょうが・・・。
それでも忙しい日々の合間に訪れる貴重な休日には、なんかワクワクするようなことがしたくなる気持ちは競馬場はともかく少しはわかります。とりあえず手軽に楽しむならばクルマ!とオススメしたいところですが、まあ今の日本にはいろいろな趣味が溢れていてあれこれ楽しめます。別荘なんかも首都圏100km圏内でいくらでも見つけられますし、そこにガレージなんか作ったら楽しくて仕方ないはずです。まあ月に1〜2回は週末温泉宿泊が趣味という人には無用かもしれないですけど。
やはり「趣味」という言葉の解釈は、人によって多少なりとも違うものですが、人生を豊かにするためには不可欠なファクターである事は間違いないと思っています。ちょっと理解できないのが「多趣味」を鼻にかける輩で、テメーのは「趣味」じゃなくてただの「ファッション」だろ〜!なんてツッコミを入れてあげたい衝動に駆られます。多趣味っていろいろなことに「お金」と「時間」を費やすわけですから、これは犯罪的な行為じゃないですか? いくらお金がたくさんある人でも、ずっと遊んでばかりいたら楽しくないでしょうし、そんな「効用」が少ないことにお金を費やすなんてとってもマヌケです。
たくさんの趣味にお金を注ぎ込むのは不毛ですが、1つのことにとことん集中できて、それで日々が楽しく暮らせるなんていう趣味ならば、多少はお金がかかってもいいのではないかと思います。「お金のかかからない趣味」というのに人気が集まるみたいですが、やっぱり限度こそあれ趣味というのは「打ち込んで」こそ大きくリターンがあるものじゃないですかね。ピアノが趣味でそれを通じて人と交流するならば、一念発起してベーゼンドルファーかスタインウェイくらい買ってしまった方が楽しめるはずです。スポーツカー趣味にしても同じで、フェラーリに乗る人は年収3000万円以上が想定されているようですが、フェラーリが絶対に楽しめる「趣味」だと言い切れるならば、年収500万円でも所有する価値は絶対にあると思います。
クルマが趣味で休日に楽しいドライブをしたいならば、一般道をミニバンでノロノロ走るのではなくて、スポーツカーでサーキットにでも繰り出した方がよっぽど健康的です。しかしそのためにはサーキットで楽しく走れるクルマを調達しなければならず、なかなかややこしいハードルがあります。実際のところ休日のサーキットへ行っても500ps超の桁違いのスーパースポーツカーがたくさん走っているだけですから、「公道最速マシン」なんて触れ込みすらあるスバルWRX STIやランエボで出掛けていっても、ストレートで思いっきり実力の違いを見せつけられて口惜しい思いをするのがオチです(日本の中古スポーツカーにNSXなどを除いて高値が付かない理由がこれですね)。360モデナよりも35GT-Rの方がいくらか安く調達できるかもしれないですが、非日常なドライビングを楽しむ「趣味」にとことん生き甲斐を感じたならば、1000万円を投入してみてはいかがでしょうか? 400psの360モデナ(車重1450kg)を全開させれば、まず簡単にストレートで抜かれることはないでしょう。
サーキットはちょっと・・・という「クルマ趣味」ももちろんアリです。ただし公道を楽しく走れる乗用車は残念なことに、年を追うごとに「趣味性」が減退する傾向が強くなっています。昨今ではスポーティなクルマの定義が、「スリリング&奥深さ」から「安全&操作容易性」へと完全に塗り変わってきていて、最初から「スポーツ」を掲げていない「メルセデス」「レクサス」「アウディ」の好調な販売に吸い寄せられるように、「BMW」「マツダ」「ホンダ」もすっかりと角が取れたまろやかなクルマばかりを作るようになりました。BMW、マツダ、ホンダの最近のクルマは、決して悪くはないのですけど、ことごとく「変調」なものばかりになってしまいました。いよいよ低速トルクで走らせるクルマ作りが骨の髄にまで達してしまったようで、かつてのエンジン屋の面影はもはやだいぶ霞んでいて、2速でヒルクライムに挑むと、すぐにアクセルの操作感がゲロゲロに悪くなっていきます。ターボもスカイアクティブもHVも結局のところスポーツエンジンには成り得ないようです。いずれも例外なく高回転の領域などすっかり無いかのようにすぐに頭打ちになってしまいます。「つまんね〜」って誰も言わないのが不思議なレベル。
M235iくらいのスペックがあれば、だいぶフィールは変わりますけど、このクルマもイマイチ方向性が定まっておらず、結論をハッキリ言ってしまうと「スポーツ」など全く意識していないのでは?なんて感じる瞬間が正直言ってたくさんあります。もちろんBMWらしい「精緻さ」は随所にありますが、これこそが「趣味」だ!と強く言い切れるクルマじゃないです。先代の「135iクーペ」はポルシェに立ち向かうスパルタンさがあったのですが、そこから一気に高齢者向けのマイルドなアシになってしまいました(CMで「02」を使うくらいですから・・・狙い通りなんですね)。失礼ですが良くも悪くも「普通」です。さらに言うと新しくなったマツダ・ロードスターもまた「趣味」か?というとこれも違います。海外では女性ユーザーが5割というこのクルマの事情もあるのでしょうけど、いよいよ「お買い物車」としての性能をアップさせています。ロードスターのシャシーにM235iのユニットを押し込んだりすれば、「趣味」のクルマらしいワクワク感はありますけど・・・。
ついでに言ってしまうと、復活が待たれるホンダの「シビックtypeR」ですが、2LターボのFF最速モデルってのは何だか新しさ全く無いです。FF車は設計の特性上どうしてもエンジン出力に限界があって、300psを超えると上手く発進できなくなりますから、決して高くない限界に向かって突き進むことに何の価値があるのか?正直言ってわかりません。FF車は結局のところ軽く作ってこそ価値があるわけで、これを「趣味」のクルマにするならば、CセグよりBセグ、さらにAセグの方がさらに良くなります。つまり「趣味」のクルマであることを基準として商品性の高さを追求するならば、「アウディS1」やスズキの「スイフトスポーツ」そして「アルトRS」こそが正しい選択だと思います。
そしてその中でも特に「趣味」を楽しめて大きく主張できるものが、「アバルト595」じゃないかと思います。本体価格343万円〜は決して安くはないですけども、1120kgのボディを160psのエンジンで引っ張るワクワク感に感性がシンクロするならば、良い投資だと思います。このクルマ持っていると言われたら、よっぽどのクルマ好きだな・・・って思いますよ。それこそロータスエリーゼやホンダS2000を持っている人よりも「熱いもの」を感じますね。アバルト595と同じかそれ以上の過激なパワーウエイトレシオを誇るクルマはほかにもありますが、実際に乗ってみるといろいろと困ったこともあります。1230kgで192psのミニ・クーパーSはトラクションに難があり路面に出力を伝えられない部分があり、3気筒のクーパーの方がバランスが良いくらいです(ワン、クーパー、クーパーSとエンジンを使い分けるチャレンジ精神には感心ですが・・・)。
日本に住んでいると、クルマのチョイスは自然と日本車かドイツ車になってしまい、この2国のクルマこそが世界で最も優れていると当たり前に思ってしまうのですけど、当たり前というのは裏を返せば「平凡」なんですよね。ダイハツに乗ろうが、BMWに乗ろうが大差ない!とまでは言いませんけども、ドイツ車と日本車がお互いに技術提携なんかしてまで「世界一」のクルマを作っている!と自負しているようですが、どんどんスケールの小さなクルマになっていませんか?ハッキリ言って「つまんない」ですよ・・・。一体なぜ日独メーカー車には「458イタリア」や「アルファ4C」や「アバルト595」や「パンダ4×4」のような全身から「趣味」を発信して思わずワクワクさせてくれるクルマが少ないのですかね・・・。
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