2015年6月22日月曜日

現行スポーツカーをあれこれ定義してみる。 トヨタ86とマツダロードスター

  日本はいつの間にやら「スポーツカー天国」で、さまざまな価格帯のスポーツカーが選び放題になっているなんて某雑誌に書かれていました。もう激安の中古ポルシェを探して500万円近くを費やすよりも、ポルシェというブランド価値を考えないならば、まあ同等以上の満足感が得られるスポーツカーが新車で手軽に手に入る!といわれれば確かにそうですね。沢村慎太朗氏は「911とマツダロードスター以外は亜流スポーツ!」と切り捨てましたが、そんな極論を無視できるくらいの「歓び」は様々なモデルから感じられます。

  日本車のスポーツカーの良い点は、なんといっても「専用設計シャシー」です。これによってポルシェに負けないスポーツカー的な要素が出せるのが大きいですね。ポルシェ以外のドイツ車はセダンやスモールカーのシャシーを流用しているのこともあって、ポルシェの対抗モデル(Z4、SLK)がことごとく酷評されてきましたが、日本のスポーツカーは真面目に設計されているからそんなことはないです。トヨタ86やマツダロードスターはポルシェよりも楽しい!これはガチ。

  「スポーツもどき」なドイツ車(Z4、SLK、TTなど)は、エンジンやミッションの良さには定評があって、まあそこそこ納得はできますけど、着座位置から見た空間設計に難があったり、ステアリングと4輪の「コミュニケーション」が普通乗用車の流用ですから、本来はそこから生まれるはずの「非日常」な世界観が乏しく、それらに飢えているユーザーからはそっぽを向かれるクルマです。それに対してマツダ・ロードスターやトヨタ86/スバルBRZ、ホンダS660は、そのフィールの部分に拘っていて、やはり日本メーカーがある程度は採算度外視してでも作りたいと思わせるだけの「存在価値」が確かにあります。

  スポーツカーに詳しくない人のために、「専用設計スポーツカー」と「改造乗用車」を分類すると以下のようになります。

「専用設計スポーツカー」・・・(ポルシェ)911、ボクスター、ケイマン、(ロータス)エキシージ、エリーゼ、(マツダ)ロードスター、(トヨタ)86、(スバル)BRZ、(ホンダ)S660、(シボレー)コルベット、(ジャガー)Fタイプ

「改造乗用車」・・・(日産)GT-R、フェアレディZ、(レクサス)RC、(ホンダ)CR-Z、(スズキ)スイフト=スポーツ、アルトRS、(ダイハツ)コペン、(BMW)4シリーズ、Z4、2シリーズクーペ、(メルセデス)SLK、A45AMG、CLA45AMG、(アウディ)TT、A5、(プジョー)RCZ、(ルノー)メガーヌRSなどなど

もちろんフェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレンなどは専用設計ですがスーパーカーや本体価格が1000万円を軽く超えるモデルは割愛しました。これだけ見ると、日本車がいかに安く「専用設計スポーツカー」を市場に導入しているかがよくわかると思います。実際にロードスターやトヨタ86といったクルマは、欧州では「いったいどういう生産管理を行うとこんなにスゴいクルマがこの価格で作れるの?」なんて驚きで迎えられているようです。

  改めていうまでもないですが、ポルシェとロータスが日本で一定の地位を得ているのは、スポーツカーに要求されるものに対して、どこまでも真面目にクルマ作りをしている点が評価されているからです。ポルシェやロータスが支持される市場こそが。最も「健全」と言うのは少々エゴかもしれませんが、社会全体が一定割合でもスポーツカーの商品価値を認めてくれる土壌があるのであれば、より「純度」の高いスポーツカーにいつまでも市場に留まってもらいたいと切に思います。

  「ポルシェ911」は1950年から生産が始まったポルシェの1号モデル「356シリーズ」から絶えず改良を加えられて、とうとう65年の歳月を歩んできたという、それだけで「格別」なクルマです。ポルシェというブランドは絶えず「合理主義」だったという証言もある中で、「RR駆動」の4座クーペというスタンスを一貫して守り、そのまま世界の頂点を見据えるスーパースポーツにまで成長と遂げました。「356シリーズ」の始まりは、それこそ「ヨタハチ」か「ホンダ360」みたいなごくごく標準的なクルマで、そこにファン、レース、メーカーの熱意が65年間に渡って結集し続けると、世界最高のスポーツカーになる!ってのは、やはりロマンがあります。余談ですが1950年当時にはトヨタからも「トヨペットSA」という当時の水準から考えれば非常に高性能な「日本版356」とも言えるモデルがあったそうです。

  そのとてつもなく長い「911の歴史」からみれば、「マツダのロータリー」や「日産の直6ターボエンジン」などは、出てきてあっという間に消えた!と言ってもいいほどに短命です。多くのクルマファンが「ポルシェは正義」と考えるのに十分な年月の「重み」があるわけです。しかしそんなポルシェも1990年代には経営危機を迎え、その時点ですでに長い歴史を持っていた「911」の開発も単独では継続できないとの判断から、同じシャシーを使う廉価モデルの「ボクスター」を発売して、なんとか採算ラインを維持する戦略を採りました。この時にボクスターの方向性を決める決定的な要因になったのが、マツダのロードスターの成功と言われています。

  何が言いたいか?というと、悠久の歴史を持つポルシェが辿り着いた地点と、日本のスポーツカーがこだわるポイントには、持ちつ持たれつの関係にあるということです。ポルシェがあるから日本メーカーは立ち上がり、日本メーカーのアイディア&圧力こそがポルシェが生命力を維持するのに不可欠なんだと思います。「ポルシェ」「アウディ」「マツダ」「ホンダ」「トヨタ」「日産」といったドイツと日本のメーカーがどちらも情熱を持ち続けることで、マレーシア政府が支援する「ロータス」や、イタリアの雄「アルファロメオ」、そしてGMやフォードといった北米メーカーからも「コルベット」「フォードGT」といったグローバルで挑戦するモデルが出てくるのだと思います。


 
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