2015年6月12日金曜日

インプレッサ の峠スペシャルは「FF」モデル

  絶好調が伝えられるスバル。その基幹モデルである「インプレッサ」の売れ行きを支えているのは、クロスオーバーの「XV」とAWD&2.0Lのみに採用される「アイサイト」なのだそうです。そのおかげもあってブランドのボトムモデルにも関わらず比較的価格の高いグレードからよく売れているみたいです。わざわざ軽やコンパクトではなく、スバル車を買おう!という人々ですから、クルマの性能に拘った結果としては非常に妥当ですし、最上級モデルにしか「アイサイト」が付けられないという「絶妙」なスバルのマーケティングは大成功だったようです。

  そんなインプレッサでも「2L&FF」のモデルに関しては、非情にも「アイサイト」が装備できません。しかも本体価格191万円の「2L&FF」に対して、226万円の「2L、AWD&アイサイト」との価格差は35万円になりますが、AWDというだけで十分に納得できる価格にも関わらず、アイサイトまで付いてくるわけですから、上級モデルの方がだんぜんにお買い得感があります。もっとも「1.6L&FF」となると大特価ともいえる160万円〜なので、アイサイトを選ばないという選択肢も当然に出てくるようですが・・・。

  インプレッサは、1992年にデビューし2000年、2007年とフルモデルチェンジを行ってきました。この初代〜3代目までは、「男臭い」「武骨」といった生真面目な日本車イメージをとことん追求したような設計で、どうも「垢抜けない」印象のものでした。先日も某大御所ライターがウェブ記事で「最近は若者のためのクルマがない」嘆いていましたが、おそらくその方の脳裏にあった「若者向けのクルマ」とは、この初代〜3代目までのインプレッサだったと思います。ホンダシビックやトヨタカローラ/レビン/スプリンターが80年代にやっていたことを90年代になってから真似し始めた「周回遅れ」な感じがなんともピッタリのようです。「若者が乗るのはこれくらいがちょうどいい」といった年配者の不遜な考えにつながっているともいえます。単に若者がセルシオとかシーマとか乗る風潮が許せないだけだろ・・・って気もしますが。

  それでも初代と3代目の間にもそれなりの進化があり、単なる「5ナンバー」「3ナンバー」といった違い以上にスバル側の設計意図の変化がありました。しかし周囲の反応はすぐに変わるものでもなく、3代目になっても「周回遅れの若者車」というイメージを打破することもなく、このモデルは経済危機などの影響でわずか4年で幕を降ろしました。スバルとしては3代目インプレッサを、このクラスの欧州2強であったVWゴルフとフォードフォーカスへ向けた「日本からの刺客」とする意図があった(WRXは当初ハッチバックのみ!)と思われますが、「日本の周回遅れ」がそう簡単に「欧州最前線」に並ぶはずはないという、メディア側の恣意的な選別(それなりの理由もあったでしょうが)に遭いました。また欧州車のように後輪サスを高性能化するなど、高コスト体質だったこともあり異例に短いモデルサイクルでの幕引きとなりました。個人的な感想としては3代目はフロントデザインがもう少しマトモならば「伝説の名車」になれた気がします・・・。

  2011年に新しいスバルを象徴するデザインを纏って登場した4代目インプレッサは、2009年に登場していた5代目レガシィを内装デザインで上回るなど話題満載で登場し、大型化して日本では不人気になっていたレガシィの逃したニーズをメーカーの狙い通りに摘み取っていきました。デザインや装備が最新鋭のものになり、その結果として年配者が考える「若者に相応しいクルマ(周回遅れ車)」の印象は大きく後退し、まだまだ160万円で十分にお買い得なのですが、「若者にはもったいない!生意気!」な外観になってしまったようで、あまりオススメされなくなったように感じます。その代わりにフィット、マーチ、ノート、あとは軽のハスラーなどがプッシュされていった印象です。まあフィットやノートに比べれば、インプレッサの方が価格もまともで、むしろお買い得(若者向け)なくらいなんですけどね・・・。

  峠やワインディングを無理なく楽しく走れて、もっともお手軽な新車価格のクルマは、現状では間違いなくインプレッサだと思います。初代〜3代目までの「男臭い」イメージも現行モデルになって4年が過ぎてだいぶ薄れてきました(先代がまともに売れてないので)。そもそもこのクルマの存在意義は、「若者向け」でも「年配向け」でもなく、日本でクルマを必要とするほぼ全ての人に満足して使ってもらう!という「国民車」的な「使命」があるように感じます。例えば、1.6LのAWDモデルにだけ「MT」が設定されていますが、日本の寒冷地においては「AWD&MT」へのニーズが少なからず存在します。軽やSUVを除けばこの設定を行っているのは、インプレッサ以外にはアテンザ(ディーゼル)とランエボだけです。どちらも乗り出しで400万円オーバーですから、インプの存在はとても貴重です。

  さてそんなインプレッサですが、スバルのラインナップの中でFF車を置き続けるところも異彩を放っています。何の為の設定か? もちろん真意はスバルの人にしかわからないですけども、期待を込めた推測をさせてもらうと「スバルのやり方で世界のライバルを制する」「スバルらしさを維持する」といったところだと思います。80年代の後半から日本メーカーが無批判の内に取り入れて、多くの日本車の基本機構ともなった「横置きエンジン&FF」というごくごく当たり前の設計に全てのFF車が収束してしまったら、何だか味気なくなりましたが、そんな風潮に対してのアンチテーゼ(スバルらしい!)ではないかと思います。。

  改まっていうことでもないですが、ポルシェのスポーツカーにも使われる、小型で低重心化が可能な水平対抗エンジンを装備し、アウディと同じく最良のAWDメーカーを目指すために、エンジンの縦置きにこだわるといった、「尖った設計」こそがスバル車の矜持です。一方でFF車を欧州でヒットさせたホンダやマツダは、イタリア人ダンテ=ジアコーザ(フィアットの開発者)が発明したジアコーザ式横置きエンジンの設計をベースに、いわゆる欧州型のFF車を上手く作ったにすぎません。このイタリア式の前に、いよいよメルセデスやBMWといった名門ブランドまでもがイタリアの「軍門」に下りつつあります(アウディもA1、A3、TTはVWのイタリア式機構です)。

  世界中をドライブしてまわったわけではないですが、週末に日本のワインディングロードはとても素晴らしい憩いの場で、信号機から開放されてひたすらに走るだけでも十分に駆け抜ける歓びを感じられます。どのクルマで走ったら楽しいか? 真っ先に思い浮かぶのが「スイフトスポーツ」「アクセラスポーツ2.0L(FF)」で、これら「イタリア流」の2台はユーザーからの評判も上々ですし、それぞれにメーカーもよくニーズを考えて走る気持ちにさせてくれる設計が光ります。これに対して「スバル流」の「インプレッサスポーツ2.0L(FF)」はというと、「機構の独特さ」に歓びを感じる人から愛されているようです。AWDモデルよりもリニアなハンドリングが楽しめます(MTが選べない点が残念ですが・・・)。「イタリア流」の本場の輸入車にも楽しめるモデルは揃っていて、いよいよMTが日本上陸する「ゴルフGTI」をはじめ「メガーヌGT220」「プジョー208GTi/XY」辺りが乗ってみてハンドリングに不満が無い好モデルでした。

  「スバル流」か?「スバルじゃない」か? ワインディングを楽しめるFFモデルはどちらかに分類されるわけですが、それでもお手頃価格でクルマを作り続けるスバルの心意気は素晴らしいです。スバルにはこの異彩の「FF」モデルを日本スペシャルとして育てていってほしいものです。MTを設定するのは構造上難しいのかな〜?

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